戦艦「武蔵」は誰のもの?

3月2日にマイクロソフト共同創業者で資産家のポール・アレン氏がフィリピン・シブヤン海で戦艦「武蔵」を発見したと大きくニュースで取り上げられた。史上最大の戦艦「大和」型2番艦の「武蔵」は米空母艦載機の攻撃を受けて撃沈され、潮流の速いシブヤン海では正確な沈没地点がこれまで分からず「武蔵は沈んだが浮力が釣り合って海中を今も漂い続けている」という伝説が生まれたほどだった。
しかし発見されたとは言っても武蔵の船体は引き裂かれている上に深さ1000メートルの改定では大規模な引き揚げは物理的に不可能だ。引き揚げができるとしても一部の部品や、発見できれば乗組員の遺骨を回収するという作業になる。遺族の中には沈没船を墓標と捉えて一部であっても引き揚げに反対する声もあり、意向を尊重しつつ一部引き揚げが実施できたとしても、今度は武蔵の所有権の問題が出てくる。
基本的には沈んだ軍艦は所属していた国の所有物になるが、日本は太平洋戦争の敗戦後に進出した現地から撤収する際に資産をすべて放棄しているので、沈没船もこれに該当するという捉え方がある。また戦争で生じた多くの軍艦と輸送船の沈没船は航路を塞ぎ、講和条約で撤去する費用と人員を日本が提供することを求められた。戦後賠償として各国と協定が結ばれ、沈没船は日本の責任として引き揚げられ解体し、得た鉄くずを売った代金は賠償金として納められてきた。この引き揚げ作業は完了済みで戦後賠償も払い終えているので今この協定を持ち出しても効力はないが、こういった経緯がある以上戦艦「武蔵」は日本の所有物だとフィリピン政府に強く言うことは出来ない。また武蔵の沈没地点は公表されていないがフィリピン領海である可能性が高く、所有権はともかく管理権はフィリピン政府にある。武蔵の備品を引き揚げた際の取り扱いは発見者のアレン氏とフィリピン政府、日本政府が協議することになるとのこと。日本とフィリピンの関係は良好で、資産家のアレン氏は強く所有権を主張しないと表明済みなので、三者が納得のいく結論が出ることを期待したい。